2021年現時点で「事業継承の後継者不足が今後、深刻化する」「生産性向上のための業界再編は国策になる」と予想されています。
この2つを達成するため、日本全体で増えるのが中小規模事業のM&Aです。
これは歯科医院も同じです。
しかし現時点(2021年)では、歯科医院の価値が正当に評価されないケースが散見されます。
それは特に、予防型歯科医院においてです。
そこで、5~10年後には医院売却を考えている方のために、【適正な医院評価額】で第三者承継を進めるポイントについて記しました。
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2025年に2つの医院が自院の評価額を査定しました

これは2025年の話です。
治療中心の医院「クラブ歯科医院」と、予防中心の医院「ユメオカ歯科医院」があります。
この2つの医院は年間売上が同じですが、月間リコール数は大きく異なっています。
詳細は以下の表のとおりです。
クラブ歯科医院 | ユメオカ歯科医院 | |
売上(年間) | 6,000万円 | 6,000万円 |
自費(年間) | 2,000万円 | 1,000万円 |
リコール数(月間) | 50人 | 250人 |
新患(月間) | 30人 | 20人 |
キャッシュフロー(年間) | 1,500万円 | 1,400万円 |
表を見ると、クラブ歯科医院の月間リコール数は50人で、ユメオカ歯科医院は250人です。
2つの医院ともに院長は60代で後継者がいないため、医院の売却を視野に考えています。
そこで、顧問税理士に紹介してもらった会社に、医院評価額の査定を依頼してみました。
すると、次のような査定の返答が返ってきたのです。
クラブ歯科医院:4,500万円
ユメオカ歯科医院:7,000万円
同じ売上(また借入残も同じです)なのに、どうして査定額が155%も異なるのでしょうか?
また、その差が2,500万円も生じるのでしょうか?
1年間に生み出すキャッシュフロー(院長報酬含む)は、両医院とも1500万円と1400万円でほとんど変わりません。
予防型と治療型で査定額が大きく異なる理由があります

この差はどこからくるのでしょうか?
会社や医院の評価額というのは、一般的には
【1年間に生み出すキャッシュフローに対して、その成長性を加味した適当な倍率】
をかけて算出します。
その倍率は、およそ3~5倍程度と言われています。
よほど成長している会社や医院でない限り、3倍ぐらいが妥当な倍率です。
そのため、クラブ歯科医院とユメオカ歯科医院の年間キャッシュフローに3倍の倍率をかければ、
クラブ歯科医院は4,500万円、ユメオカ歯科医院は4,200万円となります。
クラブ歯科医院の方が300万円ほど高くなります。
この記事を書いている現時点(2021年)では、このような評価が一般的になると思います。
理由は、多くのM&A仲介業者が予防型歯科医院の価値を分析できない、理解できていないためです。
そうなると、財務から算出した”相場”を起点に「大体、これぐらいですかね」という感じで話がはじまってしまいます。
そして院長も医院売却についてはよく分からないため、その”流れ”にのってしまいがちです。
しかし医院評価とは本来、専門家が算出したものがベストではなく、買いたい側が「いくらなら買ってもよいか」が、基準になるはずです。
そのため、買いたい側に医院価値を説明できないと、相場起点で話がはじまってしまうわけです。
医院評価額は需給によって価値が決まる。

これは不動産にしても、アート作品にしても同じです。
そしてこれから後継者不足の深刻化、生産性向上が必須になる中で、医院の売買はますます増えてくるはずです。
その過程で、同じ医院でも医院評価額は算定する会社によって、大きく変わってしまうと考えられます。
なぜなら、財務分析はどの会社が行ってもほぼ同じですが、無形資産を分析して加味できるかどうかは会社の力量によって大きく変わるためです。
歯科医院の無形資産とは何か?

無形資産、ちょっと難しい言葉ですが簡単に言えば「目に見えづらい価値」です。
例えば、
・特許
・ブランド
・リピート顧客数
といったものです。
それらがあることで、今後の成長の原資になるものです。
歯科医院で言えば、リコール数が無形資産にあたります。
これは財務諸表上の価値にはでてきません。
しかし、医院を買収して受け継ぎたい院長を想像してみてください。
彼らからすれば例えば、リコール数が多く伸びている医院の方が、受け継いだ後に成長を加速できるイメージが容易にわきます。
つまり、買いたい側は【同じ売上、年間キャッシュフローであれば、リコール数が多い医院を望む】わけです。
そのため、評価額の算出が「クラブ歯科医院の倍率は3倍、ユメオカ歯科医院の倍率は5倍」というものも、買いたい側からすると納得できます。
また、予防型歯科医院の無形資産はリコール数だけではありません。

そして、このシートと財務を使って説明することで、売却相手も納得感が高まります。
また、財務から算出した相場ではなく、適切な医院価値を起点とした議論をすることで、双方が納得できる第三者承継に繋げることができます。
そのため、この「医院価値の適切な説明」という起点を作ることが、極めて重要です。
それができないと、繰り返しますが財務だけから算出された相場を起点に話が進んでしまいます。
予防型歯科医院の院長は、この点を特に気を付けたいものです。
なぜなら、予防型歯科医院には長期継続の来院者、スタッフなど無形資産が多くあるからです。
そこでご提案です。第三者承継を考えており、仲介業者さんを選ぶ際には、
「予防型歯科医院で財務諸表には表れない価値は、どこにあると考えていますか?」
「財務以外で当院の価値はどこにありますか? もしくは改善すると価値が上がる部分はどこですか?」
と【2つの質問】をしてみましょう。
納得できる回答が得られない場合、貴院の価値が正当に評価されない、と考えても良いと思います。
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治療型とは価値が違う!予防型歯科医院の承継セミナー
2022年現在、1~2か月に1回程度の頻度で【Zooomセミナー】を開催しています。
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関連教材

60代になり「近いうちに医院を売却しよう」と思ったタイミングで、今回お話したような「同じ売上でも医院価値が全然異なる」ということを聞かされても、打つ手がありませんよね。
そのためユメオカでは、40代や50代から第三者承継を1つの選択肢に入れた、【ゴールから逆算した予防型医院づくり】を推奨しています。
今回お話した無形資産を高めるためには、10年ぐらいはかかるからです。
また「高く評価される医院」づくりをすれば、親族や勤務医に譲ることになっても、引き継ぐ側に喜ばれます。
ユメオカでは、そのための医院づくりをサポートするダウンロード教材、
『後継者問題を解決する40代からはじめる価値ある医院づくり』を、提供しています。
40~50代で地域においても重要になっている予防型歯科医院の継続を望みながら、後継者がいない院長向けです。
その他にも、【予防型経営★実践アカデミー】という院長向けの定期会員制プログラムの中から、下記の教材7本を単品(@税込6,600円)で提供しています。
1教材につき1テーマで提供しており、30~40分ほどの映像コンテンツと、医院で編集して使えるツールを付属しています。
□『後継者問題を解決する40代からはじめる価値ある医院づくり』(※)50代以降の先生にもオススメ
□『育成カリキュラム作成・活用法 ~ 歯科医師、歯科衛生士版 ~』
□『20人以下の医院のためのスタッフ昇給、賞与、院長報酬』
□『空き時間の有効活用でより働きやすい医院へ』
□『医院一丸になり患者さんに集中できる一人必要売上の共有』
□『日常では気づきにくい予防型歯科医院で働くやりがい』
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▼1本税込6,600円で提供している7教材はこちらからご確認いただけます。
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