治療の中断が多い理由は?歯科医院の延患者数を増やすコミュニケーション方法

治療の中断数で悩む医院さんは多いです。

せっかく新患が多くなっても、一向に患者数全体が増えていかないためです。

しかし、中断の原因も分からず、どう対策したらよいか? 分からない院長も多くいます。

そこで、治療の中断を少なくするコミュニケーションについて記しました。

全スタッフでこの内容を取り組めば、中断は少しずつ減ってくることでしょう。

治療の中断が多い医院さんは、この内容をスタッフミーティングで共有しましょう。

Contents

新患数は多いのに患者数が増えない状況が1~2年続いています

新患数は平均して月間30人くらい、延患者数は400人強いて、この延患者数が中々増えない医院さんの話です。

この医院の新患率は7%以上(30人 ÷ 400人)で、ユメオカの基準値5%以上を超えています。

しかし、延患者数もレセプト数もここ1~2年くらいほとんど増えていません。

ちなみにリコール数も、月間80人程度でずっと停滞しています。

さて、この理由は何でしょうか?

この医院さんの状況を整理してみます。

  • 新患率は7%以上で毎月継続している
  • しかし、レセプト数も延患者数もリコールも増えない

ここから、原因は中断が多いことが考えられます。

しかし、中断が多い原因は院長もスタッフもよく分からないようです。

院長に聞くと「次回の治療内容などもしっかり説明するようにしているし、なぜ中断が増えるのか私もよく分からないのです」という答えです。

このような医院は日本国中に多くあります。

さて、中断の原因は何でしょうか?

  • 治療が上手くない
  • 医院が嫌になった
  • スタッフの対応が悪い

確かにこのような要因も一理ありますが、主要因ではありません。

この医院さんで中断をした治療枠の治療内容を調べていただくと、【クリーニング・スケーリンング】の次の予約が7割を占めていました。

つまり、「次回、クリーニングを行う」という予約で、中断する人が多くいたのです。

普段、患者さんに対してどのように説明しているかを院長とスタッフに確認してみました。

すると、

「次回はお口の中をきれいにするためにクリーニングをします、それをしてから詰め物をセットしていきますね」

といった感じでした。

これは何がよくないのでしょうか?

患者さんは、この説明内容がよく分からないのではありません。

この時、患者さんは「どうしてクリーニングなの? 治療しに来たのに・・、治療を早く終わらせたいのに全然、終わりそうにないな」という疑問を消化しきれずにいるのです。

つまり、

  • どうしてクリーニングなのか?
  • 治療が全然、終わらない(もしかして、治療を長くしている? といった誤解)

が理解できずにいるのです。

歯科医療に携わっている人からすると「治療の途中にスケーリングをする意味」について当たり前のように分かっていますよね。

しかし、素人の人にとっては、全く見当もつかないのです。

このギャップが、治療の中断を生み出しているわけです。

そのため、この治療途中のクリーニング(スケーリング)の時に、上記2つがの疑問が解消できるように患者さんに伝えてあげることが、中断を減らしていくことにつながります。

治療の中断(ドロップアウト)を減らすコミュニーケーション法を解説

ここで重要なのは患者さんの立場になって伝えてあげることです。

患者さんの立場とは、

  • どうしてクリーニングなのか?
  • 治療が全然、終わらない(もしかして、治療を長くしている? といった誤解)

という疑問を抱いている状態です。

そして次回、クリーニングを行うことになる患者さん向けにどのように伝えたらよいのか?

一例ですが、

「これから治療していき、詰め物を入れていくのですが、お口の中の歯垢の付着率が30%以上の状態で治療をはじめると、むし歯の再発の確率が高まってしまいます。

というのは、歯垢が多くあると、詰め物を埋めるとき、歯垢などが一緒に入ってしまう可能性が高まるからです。

そこからまたむし歯になってしまいます

そこで、次回は歯垢をとるためにお口の中をしっかりクリーニングして歯垢の付着率を30%以内にしてから治療をはじめたいと思います。

ご理解いただけますでしょうか?」

このように伝えた上で患者さんが納得すれば、次回クリーニングを行う意味を理解し、来院してくれ、治療が終わった後の定期検診もつながりやすくなります。

しかし、この伝え方を歯科医師や歯科衛生士だけが理解して伝えても、中断はあまり減りません。

なぜかと言えば、患者さんには何度かこのようなことを伝えないと、理解できないためです。

患者さんの中にはこういう話をはじめて聞く人も多く、ぼんやりとしか頭に入ってこない方も多くいらっしゃいます。

そこで、受付や助手の方を含めたすべてのスタッフが、統一して伝えられるようにすることが、医院の一貫性にもつながります。

なぜなら、患者さんは受付で「次回はクリーニングするって聞いたのですが、治療はいつからですか?」と確認されたりもします。

また、初診カウンセリングの時に治療方針として、このことを事前に簡単に伝えておくと、いざ治療途中でクリーニングが必要な時に、理解が進みやすくなります。

そのため、全スタッフがこの話を患者さん向けに伝えられるようにすることで、中断が減ってくるのです。

全スタッフで一貫性を持って伝え、治療中断を少なくしていきましょう

といっても、この伝え方を全スタッフが丸暗記するのも少しおかしな話です。

全く同じ伝え方を全員でするのではなく、必ず伝えるキーワードだけ統一しておくことが必要です。

キーワードは【治療方針】【理由】【次回すること】の3つにわけて、医院で設定し全スタッフに共有すると良いでしょう。

例えば、

【治療方針】

歯垢の付着率30%以下で治療を開始する

【理由】

むし歯の再発リスクを下げるため

【次回すること】

歯垢を落とすためのクリーニングを行う

というようにです。

キーワードで大切なのは患者さんが聞いて、す~っと、入ってくるワードを使うことです。

例えば、「【治療方針】はRCP30%以下で治療開始」というようにすると、患者さんには伝わらないです。

正確ではないかもしれませんが、RCPをあえて歯垢の付着率と置き換えています。

患者さんにはイメージがわけばいいわけで、正しさより、分かりやすさを優先します。

このキーワードを使って、歯科医師・歯科衛生士・歯科助手・受付が、それぞれの立場でそれぞれの持ち場でお伝えするのです。

持ち場とは、初診カウンセリング時(歯科助手)・予約時や電話での問い合わせ(受付)・チェアサイドで(歯科衛生士・歯科医師)というようにです。

そして、これが医院の一貫性となって、患者さんに伝わりはじめることで、中断率の削減につながります。

そのためにもキーワードを全スタッフで共有し、全員でロープレをして口になじませておくのがおすすめです。

1アクション
医院共通して伝える3つのキーワードを作成する

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参考教材

患者目線で伝える「治療計画カウンセリング」で中断率の削減と納得の治療につながります。

カウンセリング教材一覧(上から4番目)の詳細はこちらです。

ABOUTこの記事をかいた人

丹羽 浩之

株式会社ユメオカ代表 丹羽浩之。 ユメオカとは「夢とお金の作戦会議」の略。 2004年に独立後、現在までに教材は30種類以上を開発し、全国3,000医院以上がユメオカ・ノウハウを活用し予防型経営に取り組んでいる。 そして全国8名の提携コンサルタントによるコンサルティング、【会員制】予防型経営★実践アカデミー、【会員制】歯科『採用★定着』実践ラボを主催している。 また予防歯科、予防医療の普及に最も精力を注いでいる。 座右の銘は「得意淡然、失意泰然」。