開業医の中央値である売上3,600万円で実際、勤務医時代よりも年収は増えるのか

「勤務医時代は毎月、300万円ぐらいコンスタントに売上を上げていたので開業したら大成功と言わないまでも、そこそこはいけるだろう」このように考える歯科医師の方は多くいます。

では、そこそことは一体どれぐらいでしょうか?

院長の給料は「勤務医時代より少し多い」「勤務医時代と変わらない」どれが、あなたにとっての“そこそこ“でしょうか。

また開業して最も多い売上層はどれぐらいで、その医院収支はどんな状態かを知っていますか。これを知らずに開業するのはとてもとても危険です。

開業とは多額な借金を抱えて行うことが多く、一度開業してしまうと方向修正はほぼできません。

そこで、誰も教えてくれない!最も多い売上層の開業医の実態をここでは浮彫りにしてみました。

開業して一番多い売上層は月間300万円、年間で3,600万円です

歯科医院の開業医で平均の売上はどれぐらいでしょうか。

このグラフは、日本歯科医師会が2019年3月に発表しました「歯科医業経営実態調査の集計と分析」の中から抜粋しており、集計元のデータは全国の歯科医院1,104件から有効回答があったそうです。

ここから年間売上の平均値は4,000~4,500万円と読み取れます。

しかし、これは平均です。平均値なので上位層が引き上げてしまいます。

例えば、2,500万円の歯科医院が4件で2億円の歯科医院1件の合計5件の平均は6,000万円というようにです。

そのため平均値でみても、あまり意味がありません。

そこで中央値(例えば、100人の統計なら50番目の人の値)を見ると、上記のグラフから年間3,500~4,000万円くらいになります。例えば年間3,600万円なら、月間300万円くらいの歯科医院さんになります。

そのためここでは月間売上300万円を中央値として、これから話を進めますね。

そして、月間300万円なら勤務医時代にこれぐらいの売上をコンスタントに上げていたという方もいらっしゃるでしょう。例えば、保険診療で200万円(20万点)で自費診療で100万円という具合にです。

そのためある程度、新患が増えそうな場所で開業すれば「月間300万円ぐらいなら開業後早い段階で達成できそうだ」と考える開業前の方もいらっしゃることと思います。それでは

ユニット3台で院長以外に歯科衛生士1人、歯科助手2人(内パートさん1人)の4人で月間300万円の売上なら、院長は勤務医時代より個人的な収入は増えるでしょうか。

「同じくらいじゃないかな」

「開業するので増えるんじゃないかな」

「いや、300万円なら減りそうな気もするな」

と色々と思われるかもしれません。

 

月間300万円の歯科医院の院長年収や利益を公開します

そこで月間300万円の一般的な歯科医院収支をここで公開してみたいと思います。

月間300万円といっても自費率やスタッフ数の違いから様々なため、最初に収支を公開する【医院状況】と【スタッフ構成】についてイメージを共有します。

【医院状況】
・ユニット3台
・月間売上300万円(保険診療が280万円、自費診療が20万円(自費率7%))
・月間診療日数は平均20日で、1日の保険売上は14万円
・診療単価6千円で保険だけで1日平均28人の来院数

【スタッフ構成】
・常勤は歯科衛生士1人、歯科助手1人
(歯科衛生士さんは給料24万円(+賞与分として月4万円)、歯科助手さんは給料20万円(+賞与として月2万円として計上)
・パートは歯科助手1人
(給料は月額10万円として計上)

そしてこの医院の【医院収支】です。これはお金のブロックパズル(引用:和仁達也、日本キャッシュフロー協会)と呼ばれるものです。

 

(※)注意点は、人件費は個人開業だと院長以外のスタッフのみの分、医療法人だと院長を含めた分となりますが、ここでは院長の個人収入と医院の利益を分けるため、後者の医療法人版として院長収入と医院利益を分けた形で表記します。

このお金のブロックパズルに月間300万円の医院収支を実際にあてはめてみます。

売上300万円に対して、院長収入は40万円で医院利益は27万円です。

固定費は<人件費>114万円、<その他の固定費>が105万円で、各々の内訳は以下の通りです。

<人件費:114万円>
・院長収入 40万円
・スタッフ給料 54万円(歯科衛生士24万円、歯科助手20万円、パート10万円)
・賞与分 6万円(歯科衛生士4万円、歯科助手2万円)
・社会保険 12万円
・福利厚生費 2万円

<その他の固定費:105万円>
・家賃 30万円
・旅費 6万円
・消耗品・事務・水道光熱14万円
・通信・会費・保険・雑費 15万円
・修繕・保守リース 12万円
・広告・研修 20万円
・支払利息8万円(5000万円の借入残を年間2%の利率で返済の利息)

このように特に無駄遣いしているわけでもなく、普通にかかっている経費ばかりです。

そしてお金のブロックパズルでは医院利益は27万円になっていますが、この利益はそのまま医院に残るお金なのでしょうか?

答えはNOです、利益の中から税金を引かれ、そこから返済した後のお金しか残らないわけです。この歯科医院では、返済額が月間で37万円あります。

つまり、「利益(27万円) ― 返済(37万円)」が▲10万円となり、税金分を考慮しなくても返済してしまうとお金が足りません。

ではこの足りないお金はどこから持ってきたらよいでしょうか。

持ってくるところは院長収入しか差し引くか院長の個人的な貯金を切り崩すしかないわけです。院長収入は40万円なので10万円差し引くと30万円です。

これが月間300万円医院の現実です。

例えば、あなたが勤務医として歯科医院に勤めていて売上300万円あ下ていた場合、給料が30万円ということはほぼあり得ないですよね。仮にそうであれば、スグ他の歯科医院に移ってしまいますね。

つまり、月間300万円程の歯科医院であれば、院長年収は勤務医時代より低くなります。しかし、日本の歯科医院の中間値が実際には300万円くらいであるのは冒頭のように事実なのです。

 

勤務医と開業医の仕事の量は大きく違います

しかも院長になれば勤務医時代と比べてやることが増えます。それは例えば、

・スタッフの求人活動
・ホームページ原稿作成と依頼
・材料や設備関連の業者さんとの対応
・税理士さん、社労士さんとの話
・給料支給など事務業務
・スタッフとの面談

などです。勤務医時代はほとんど診療のことだけに専念していればよかったのに、こんなにやることが増えてしまうのに「勤務医の時より年収が下がってしまう」わけです。

これはやってられませんね。

やってられない!といっても勤務医のように転職すればよいわけではなく、開業医になれば借金もたくさんあるし、自分で自分の医院を何とかするしか道はなくなります。

 

もちろん、一定の売上を上げれば、勤務医時代よりも年収は増えてきます。

この医院収支に当てはめ、院長収入60万円以上を確保した上で、返済しても20万円ぐらい利益として残す売上を算出するとは平均で月間360万円(年間4,320万円)以上です。

 

歯科業界は仮に全体売上が増えなくても活性化できる理由があります

しかし、繰り返しますが月間300万円ぐらいの歯科医院が中間値で、ここから抜け出られない歯科医院さんが多いのは事実です。

これを分かって開業すれば問題ないのですが、多くの歯科医師の方がこれを分からず開業していること、これが根の深い深い問題です。

といいますのは、チェア3台で月間300万円歯科医院が3件よりも、月間900万円の歯科医院で支出を比べると

【月間300万円医院が3件分の支出合計】 >> 【月間900万円医院1件分の支出】

です。例えば、チェアは3台×3件の9台も必要なく、6台くらいで十分です。

またレントゲンやレセコンなどの設備も3台必要なく1台で十分です。家賃も3件分合計の半分以下になります。これら以外にもスタッフ数、事務、求人なども3倍も必要ありません。

「3件×300万円」も「1件×900万円」も同じ売上でも支出は、随分少なるなるわけです。

その分はどこに使えるか? と言えば1人当たりの人件費増です。

つまり、設備会社や不動産などの会社に出ていくお金が減り、歯科医院で働くスタッフに還元できるわけです。

歯科業界全体を俯瞰したとき、このように無駄な支出がとんでもなく多く、これを最適化すれるだけでも、もっとお金に余裕がでる歯科医院、歯科で働く勤務医やスタッフも増えるといえるわけです。

そのために必要なのが「開業だけが歯科医師人生のあり方ではない! 新しい生き方の創造」です。むやみに月間売上300万円の歯科医院を増やしている業界の再構築が、今こそ必要だと考えています。

1アクション
これから開業する歯科医師の方にとって1億円はスタートライン、それが無理なら開業以外のあり方も検討する

 

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ABOUTこの記事をかいた人

丹羽 浩之

株式会社ユメオカ代表 丹羽浩之。ユメオカとは「夢とお金の作戦会議」の略。2004年に独立後、現在までに教材は30種類以上を開発し、全国3,000医院以上がユメオカ・ノウハウを活用し予防型経営に取り組んでいる。そして全国8名の提携コンサルタントによるコンサルティング、【会員制】予防型経営★実践アカデミー、【会員制】歯科『採用★定着』実践ラボを主催している。また予防歯科、予防医療の普及に最も精力を注いでいる。座右の銘は「得意淡然、失意泰然」。