そして、その求人内容で、既存の歯科医院と比べて明らかに違うのが給料です。
初任給で20%以上は高く、歩合なども含めると780万円という歯科衛生士もでてきます。
これは平均年収320万円の歯科衛生士を雇ってきた歯科医院にとっては衝撃かもしれません。
そして、このような美容整形グループの勢いはこらからも増し、あなたの地域での歯科衛生士と競合することもでてくるでしょう。
しかし、ここで焦って、張り合おうとしてはいけません。
今回は、これからの時代の流れを読み取り、歯科衛生士求人に何が必要なのかを記しました。
Contents
湘南美容外科さんはこれから歯科に本気で進出してきます

『美容医療を身近に』のコンセプトで広くテレビCMやJR社内広告などを展開し、認知度をますます高めている湘南美容外科グループさん。
現在(2020年2月)、全国に100院を展開しており、歯科医院は10院ほどあります。
ここ最近、その湘南美容外科さんが各地で歯科衛生士の募集(湘南美容クリニックさんの歯科衛生士募集サイト)を展開しているようで、求人内容をみると
歯科衛生士のモデル年 入社5年以上の収780万円、入社3年以上561万円
賞与は年2回と短期業績手当は年4回
というモデルケースを提示しています。
そして、湘南美容外科グループの代表 相川佳之氏は、2019年10月のNewsPicksインタビューで次のように答えていました。
『今、目や鼻に続いて、「歯」がトレンドになりつつある。これまで歯並びが悪いアイドルもかなりいましたが、減ってきていますよね。アメリカでは、歯並びが悪いのは家庭環境や親の責任という風潮すらあり、歯並びがよいことに、かなり大きなステータスがあります。
日本でも美容整形の「次」の成長市場は、ホワイトニングや歯並びになるでしょう。そこに美意識を向ける人が、必ず増えていくはずです』
このインタビューのポイントは
・美容整形における目や鼻の次のトレンドは「歯」である
・アイドルで歯並びが悪い人は非常に少なくなっている
・アメリカでは「歯並びが悪いのは家庭環境に問題があり親の責任」
という点です。
日本の美容整形の次の成長市場は「歯」であり、ホワイトニングや歯並び治療が増えることを予想しています。
美容歯科の市場がこれから急速に増える理由があります

これだけ美容整形クリニックが増え(現在、美容外科と美容皮膚科の総数は日本で3,656件:調査はJSAPS調査委員会)、著名人でも美容整形の体験談をオープンにする時代になると、既に多くの日本人が美容整形への抵抗がなくなってきています。
そして、肌が白くなり、顔のパーツが整い、若返ってくると「今まで気にならなかった歯のことが気になりはじめる人が増える」と私は考えています。
というのも以前、エステサロンを多店舗展開するお店に私が見学に行かせて頂いた時の話です。
そこにはセルフのホワイトニング機器が置いてありました。
私が「エステサロンでこのホワイトニングは実際、需要があるものですか?」と尋ねると、女性社長は「とても需要は多いですよ、エステのメンテナンンスで定期的に来院されるお客さんの半分以上は、“ついでに“このセルフのホワイトニングを行っていかれます」と答えられました。
つまり、「エステで肌に“ハリ“が出てくると今度は歯も気になるので、ホワイトニングもしたくなる。わざわざ歯科医院に行くのも面倒なので、ついでにできるのであれば、このエステサロンで行いたい」という顧客心理が働いているわけです。
これと同じ心理が美容外科に通う顧客にも働くのは、自然なことでしょう。
このような点から考えても、今後の日本の美容整形における歯の市場は急速に広がっていくことが予想できます。
湘南美容外科さんも当然、その顧客心理を読み解いて早めの策を講じていると考えられます。
それが冒頭の入社5年以上の歯科衛生士、780万円モデルでの求人だとも思われます。
成長市場には新規参入が当然増える!それを見越して策を打つことが重要です

湘南美容外科グループのビジョンが、Webサイトに記載されていました。
2020年で100院、2030年で1000院の展開で、日本一患者数の多い医療グループになることが目標だそうです。
あと10年で、今の10倍の1000店舗展開を目指しているようです。
先ほどもご紹介した相川氏のインタビュー内容のように、美容歯科を成長市場ととらえているため、1000店舗の中には歯科医院が多く含まれるでしょう。
もちろん、10年で+900店舗というのは直営店だけでは難しいため、M&Aも進めるはずです。
そして1000店舗といえば、どれぐらいの数かイメージできますか?
現在、日本で1000店舗ほどを抱えているのは、飲食業界に多いのですが、
・スギ薬局
・ミスタードーナツ
がちょうど1000店舗ぐらいです。
これぐらいの規模での展開を、湘南美容外科グループは10年後に考えています。
他の美容外科グループで同様に考えているところもあるでしょうし、美容外科とは違う業界から美容歯科の領域に参入してくることもあるでしょう。
このように美容における歯科の市場は急速に広がる見込みで、外部からの参入者多くなります。
そのため経営に危機感を感じる歯科医院院長もいらっしゃるかもしれませんが、私は歯科業界が活性化して、とても良いことだととらえています。
何より、人口減少時代の日本において、稀にみる成長市場となる歯科の分野に携われるのは幸福なことではありませんか?
以前の記事でも紹介したように、世の中を見渡せば、理容・美容・洋菓子はどんどん廃業に追い込まれる時代です「美容院や洋菓子の個人店廃業が急増!個人歯科医院が生き残る3つのストーリー」。
そして美容歯科の市場が成長することで、これから美容歯科領域に携わる・携わらないに関わらず、コツコツとこれまで信頼を築き上げてきた歯科医院が否応なしに影響を受けるのが、歯科衛生士求人です。
新規参入が増える10年、惑わされずに歯科衛生士求人の戦略を考えます

湘南美容外科グループのような高年収を売りに、歯科衛生士の求人を増やすグループは、これから、ますます増えてくるでしょう。
そこで、歯科医院は歯科衛生士求人において長期戦略をどのように立てるべきかを最後に考えてみたいと思います。
先に私の結論をお伝えしますと、湘南美容外科グループさんに勤務するような高年収の歯科衛生士は、
・歯科衛生士の中の一部に過ぎない
・高年収の歯科衛生士はその求人市場の中だけでグルグル回りはじめる
ことになります。
「なぜ、このように言い切れるか」といえば、他業界でも同じ現象がよく起きているためです。
何を隠そう、私自身も2005年に独立する前は当時、急成長していたIT業界にいて、同じような状況が起きていたためです。
当時のIT企業は、安定収入を得られる日本企業と、高収入を売りにする外資系企業の二つに明確に分かれていました。
そして、西暦2000年前頃になると、外資系企業が日本のIT市場にどんどん新規参入してきました。
その後、外資系企業が破格の高収入で求人を出す時代に入りました。
しかし、どれだけ外資系企業が求人市場をにぎわせても、ITエンジニアの就職先の8割は日本企業、2割以下が外資系企業といった具合にしかなりません。
というのも一度、外資系企業に就職した人は、その後も外資系企業の中だけを渡り歩く人が大半で、しかも2~5年スパンで転職する人が多いです。
そのため、求人市場は外資系企業の求人が多く目立ちますが、実際に働くITエンジニアの8割以上は日本企業で働いていました。
またユメオカのコンサルタント仲間の松田浩吉さんからお聞きしたところ「銀行、証券、保険業界もIT業界と同じく高年俸にひかれて人材が流動化しましたが、日系会社、安定志向に回帰した歴史がありました」とのことでした。
歴史は繰り返されますね。
そしてIT業界の日系企業に当たるのが既存の歯科医院、外資系企業に当たるのが美容外科や外資系医療法人と置き換えられます。
これから成長する歯科界の求人環境も、10年後にはきっと、IT企業と同じように落ちつくでしょう。
つまり、高収入を売りにした美容外科・外資系医療法人に就職する歯科衛生士は増えても、全体の2割以下、そしてその人達はその中だけで渡り歩き、既存の歯科医院の求人環境とは線が引かれるということです。
しかし、歯科衛生士求人市場には新規参入が増えるため、これから2,3年は歯科衛生士の求人市場に混乱がおきるでしょう。
ですが、その後は徐々に落ち着きはじめ、8割/2割になってくるでしょう。
重要なのは「この2,3年の混乱に巻き込まれてはいけない」ということです。
高収入の歯科衛生士求人を相手に無意識に張り合おうとして、求人で競合しようとしてはいけません。
なぜかというと、求める歯科衛生士像がそもそも異なるからです。
例えば、美容外科、外資系医療法人などに勤務したい歯科衛生士は
・もともと美容への関心が高く、自身もそこに投資している
・自分が評価されることが大事、歩合で実績を出したい
・給料などの条件が変わればスグ転職を考えたい(どこでも生きていけると考えている)
といったことを求めています。
一方、予防型を起点に健康や美容に貢献していく歯科医院に勤務したい歯科衛生士は
・自分を長く信頼してくれている来院者を大切にし、健康や美容においてもより来院者に貢献したい
・周りのスタッフがサポートしてくれる、ライフスタイルの変化に応じて安心して働ける環境が大事
・給料は生活に支障がない範囲で、平均より少し高いぐらいで十分
といったことを求めています。
比べてみると、明らかに歯科衛生士像が異なりますね。
そのため、我々は後者の歯科衛生士が勤めたいと選ばれる医院づくりをしっかり考え、環境を整えることが最も大切で、前者の高収入歯科衛生士の登場に振り回される必要はないのです。
また、求人においても、どういう人材を当院が求めているかという軸足をしっかりつくって、求人活動をしていくことが必要です。
また、美容歯科という新たな領域が登場する(市場が大きくなる)ことによって今後、歯科衛生士になりたい人も自然に増えるはずです。
10年単位でみれば、確実に歯科衛生士の数は増えていくはずです。
歯科衛生士数自体も増えてくるため、貴院の欲しい歯科衛生士人材をしっかり言語化しておけば、歯科衛生士求人にそれほど困ることはないでしょう。
「これからの歯科衛生士は収入ありきで、年収を高めていかないと採用できませんよ」と先が見通せない求人業界(特に人材紹介業)の人間が上っ面の情報で、あおってくることもあるでしょう。
そこに我々は釣られて、ブレてはいけないのです。
最後に補足しますと、私は「歯科衛生士の年収は今のように320万円代のままでよい」と思っているわけではありません。
歯科衛生士の年収を上げていくようにしていく努力は必ず必要ですが、近くに美容外科が登場したからといって、張り合っていきなり無理に年収を上げる必要はないということです。
また、歯科衛生士求人をあきらめることも、落ち込む必要もありません。
長期ビジョンを打ち立てながら、例えば予防歯科の来院者に対してアップデートやメニューの提案、物販などで1人あたりの年間購買額を増やせば、歯科衛生士の年収に少しずつ還元していくことは可能です。
そのための努力を、予防型歯科医院をつくる皆様とこれからも懸命に行っていきたいと思っています。
関連記事
応募が増える!歯科助手・受付・歯科衛生士求人の動画の内容と時間
歯科求人で応募が来ない!採用してもスグ退職してしまう、これを改善する方法があります
▶場当たり的な採用から脱却し、採用は短期と長期の2つの視点を持って取り組む時代に

▶予防歯科の明るい展望から、Webサイトに代わり10年使える動画活用まで
(サンプル動画・スライドなど多数の付録資料付き)
