歯科医院でも急にキャンセルが増え始めたり、スタッフが怖がってしまったりと混乱が続いていることと思います。
そんな中で、診療に追われながらも「この先どうしたらいいいか分からない」「気持ちだけが暗くなってしまう」という院長が多くいらっしゃいます。
そこで、先行きが見えないこの新型コロナウイルス影響に打ち勝っていくための歯科医院経営の対策についてまとめました。
最大のリスクはコロナそのものより院長の心が不安定になってしまうことと考えています。
まずそうならない状態をつくり、具体的な策を講じていきます。
Contents
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言発令後の医院運営に多くの院長が悩まれています

新型コロナウイルスの影響拡大で2020年4月7日に緊急事態宣言が発令されました。
「キャンセルが続き、この先どうしたらいいものか」
「縮小診療か?休診か?どうすればいいのか・・」
「スタッフも休ませた方がいいものかどうか」
「どれぐらい長引くか分からない中で、助成金を受けた方がいいか、追加融資なのか」
「追加融資を受けようと思うが、3月の売上は上がっているのでコロナ融資枠での利息で融資が受けられそうにない」
このように「この先どうしたらいいか分からない」と1人で悩む院長が今、多くいらっしゃいます。
そこで、福岡県郊外で歯科医院を開業する医院の事例をもとに、この新型コロナウィルスの影響下での歯科医院経営についてお話します。
青柳院長(仮名)は、福岡県郊外でユニット4台、スタッフ9名で年間売上6,500万円の予防型歯科医院を経営しています。
来院者の3人に1人はリコールで、新型コロナウイルスが福岡でも出始めた3月中旬頃から、リコール(定期検診)を中心にキャンセルが増え始めました。
そして、4月7日に緊急事態宣言が発令されると、福岡県も該当7都道府県に入っているため、さらにキャンセルが増え始めました。
当然、4月は売上も減少する見込みで、「この影響がいつまで続くか分からない」「どれぐらい長期化するのか」という先行きが全く不透明な状態で、青柳院長は資金のことも気になっています。
また、報道されている内容だと、新型コロナの影響に伴う優遇利息での追加融資や助成金申請は「売上が5%以上、下がっていること」が条件と聞きました。
3月の売上自体はむしろ昨年より10%程度上がっているし、青柳院長はこのまま様子見しかないのかと1人考えながら、不安な日々を送っていました。
新型コロナウイルスの影響による院長の漠然とした不安感を排除します

4月売上は確実に下がりそうだし、このまま5月も6月もとなれば、資金に余裕がなくなってきます。
それに、青柳院長は現時点で一体どれぐらいの借入をすればいいのかも検討が付きません。
そして『キャンセルが続く現場、スタッフの不安そうな顔、患者さんからの問い合わせ』これらを毎日、見ていると不安が大きくなってきます。
「一体、何から対策したいいのか?」と常に考えていますが頭が整理しきれません。
今、青柳院長と同じような心境にいる院長はとても多くいらっしゃいます。
そこで「正解がない、この事態の中でどのような対策をとるべきか?」について、弊社の考えをまとめましたので次にご提案致します。
対策の順番は
1)一早く余裕資金を追加融資で確保する
2)助成金の申請をする
3)固定費の見直しを行う
4)アフターコロナに向けて準備する
です。
つまり、まず余裕資金を確保した上で、助成金申請や固定費の見直しなどに取り掛かることです。
「なぜ、現時点で余裕資金の確保が第一なのか?」
その理由は以下の2つです。
①院長の心の余裕が冷静な判断を生む
院長の心の乱れは、時間軸で見ると最も大きな損失につながります。
例えば、縮小診療しながらもキャンセルがどんどん増えて、医院の通帳残額もどんどん減ってくる状況を想像してみてください。
「このままでは医院がもたないので人件費を削減するしかない」と感情的に判断してしまい、スタッフの解雇をしてしまうことも出てきてしまうでしょう。
しかしその後、コロナが終息しはじめ、患者さんが戻ってき始めると今度は、人手が足りなくなります。
そこで、求人をかけて採用・教育するとなると、「解雇・求人・試用期間・教育」費用がかかることになります。
お金の余裕をもっておこなえば、新型コロナの影響を冷静に確認しながら「どこまで耐えればよいか」のデッドライン(基準)をもって冷静に判断できます。
一早く冷静な判断ができる環境をつくっておくことが、トータルで無駄な費用の削減へとつながるのです。
それには、まず余裕資金を持つことです。
②新型コロナ枠の融資は通常の融資よりも審査が通りやすく、利息も低い、また据置期間が長い
新型コロナ対策の融資枠は通常の融資枠と別枠で借入できます。
そして、状況が状況だけに審査も通りやすいです。
また、利息も通常より低いですし、何より元本の据置期間がとても長いです。
例えば、日本政策金融公庫であれば据置期間は最長5年です。
据置期間は申込時に自分で決めることができ、その間は利息の支払いのみとなっています。
日本政策金融公庫であれば、売上が5%でも下がれば3年間は、利息0.46%です。
仮に5,000万円借入しても、利息は年間23万円、月額2万円程度です。
先ほどの青柳院長のように「売上は下がっていないので、今は新型コロナ枠の低金利の融資が適応できないし、今のところは資金は足りているので、もう少し待った方がいい」という院長も多くいるでしょう。
しかし、4月は下がってきていると思います、1か月は月単位ではなく3/21~4/20というように区切っても大丈夫のようです(ユメオカ提携コンサルタント 伏見司さんの話)
また、売上が下がるなどの条件がない融資でも2%程度です。
私は2%でも早めに借りた方がよいと考えます。なぜなら今後、「希望額を借りられない」「融資実行までに時間がどんどん長引く」状況で不安をかかえながら経営するぐらいなら、差額の1.5%の利息ぐらい安心料と考えればよいからです。
そして今後は、この新型コロナウィルスの影響が長引けば、追加融資の申し込みから実行までにどんどん時間がかかると考えられます。
ちなみに日本政策金融公庫では、4月中旬の現時点で申込から融資実行までに6~7週間程度です(地域にもよりますが)。
また、雇用調整助成金などの助成金もありますが、助成金は実行までにかなり時間がかかります(政府は1か月で入金とは言っていますが・・、労務局の特別相談窓口に問い合わせ電話をしても自動音声で、返信電話がやっとかかってくるのが5日後という地域もあります)。
それに助成金はまず、スタッフに給料を支払った後に申請し、それから審査され実行となるためです。
このような状況からも、まず追加融資で資金調達し、利息は安心料として考えた方がよい状況です。
院長の心に余裕がなくなってくると、①のようになってしまい利息とは比べ物にならない、無駄なコストを支払うことにもなるためです。
追加融資が必要なのは分かったが、一体いくら借りればいいのか
院長の心の余裕を保つために追加融資で資金調達しておく理由は分かったけれど、どれぐらいの追加融資が必要なのか?
ここにも正解はありません。
なぜなら、この新型コロナウイルスがどれぐらい長期化するか分からないためです。
仮に「一旦は終息の方向に向かったとしても、第二波がどこで起きるかも分からない」という状況です。
このような時、学び(参考)になるのは2011年の東日本大震災を乗り越えた会社や医院です。
東日本大震災の時に仙台の会計事務所で、多くのクライアントの復興を支援してきた、ユメオカ提携コンサルタントの伏見司さんは次のように言っています。

「追加融資をしたけど十分ではなく、復興の途中でお金がなくなってしまった会社は、さらに追加というのが中々難しかった」
「このような状況からも1年間は売上が0でも耐えられる現預金を持つことが必要だと思います」
この東日本大震災からの学びである1年間売上が0でも耐えられる現預金の確保、これが追加融資の目安と我々は考えています。
幸運にも新型コロナウイルスの影響が比較的早く終息して、元の経営環境に戻ってくれば、借入した分をまとめて返済すればいいだけです。
その間は利息のみの支払いで、先行き不透明な期間の安心料と考えれば高いとは思わないはずです。
それでは、1年間売上が0でも耐えられる現預金とはどのように計算すればよいでしょうか?
簡単に言えば、1年間の粗利(売上総利益)分もしくは固定費分です。
通常、利益が出ていない医院は「粗利額 = 固定費」です。
これだけあれば、売上が0でも1年間耐えられることになります。
青柳院長の医院だと年間売上6,500万円で、材料費や技工代の変動費を除いた年間粗利額は5,300万円でした。
5,300万円あれば大丈夫です。
そして3月末の支払いを全て終えた時点の現預金を確認すると、1,200万円ありました。
既に1,200万円はあるので、5300-1200=4,100万円が追加融資で必要な金額になります。
青柳院長の場合、4,100万円あれば1年間売上が0でも耐えられます。
4,100万円であれば日本政策金融公庫と民間金融機関のセーフティネットの組み合わせによる借入を行えば今のところ、青柳院長の規模でも問題なく借入できるでしょう。
前述の伏見司さんが調べてくれた2020年4月中旬時点での日本政策金融公庫とセーフティネットの利息や条件などを参考までにお伝えします。
① 政策金融公庫(新型コロナウイルス感染症特別貸付)
要件:売上が前年同月で5%以上、下がっていること等 利息:0.46%(借入後3年間) 1.36%(3年後から) 返済期間:最長15年 据置期間:最長5年 限度額:6,000万円 なお、売上下がっていない場合はセーフティネット貸付制度を活用 利息:2.16% ②民間金融機関のセーフティネット4号(保証協会付融資)の場合 利息:1.3%程度 返済期間:最長10年 据置期間:最長2年 限度額:8,000万円 (お住まいの自治体の制度により内容が異なる場合あり) その他制度融資の活用を医院に合わせて具体的に検討します。 (※)2020/4/13現在で条件や利息は今後も変更可能性あり |
雇用調整助成金などもありますが、助成金は承認されても入金が遅いので、それまで安心できない状態が続きます(パートナー社労士の話では「リーマンショックの時は4か月かかった」そうです)。
そのため、まず第一は追加融資申し込みです。同時に安心感を持って「診療縮小」か「休診」を決め、対応を進めます。
そして実際には、5月以降売上0が1年間続くというのは1年休診しない限りないので、これだけの現預金を確保できれば、どんな状況になっても1年以上は耐えられることになります。
そして仮に、1年間耐えられる現預金を持つ医院でも現預金が0になってしまうぐらい、新型コロナの影響が長引けば、それまでに、資金を確保できていない医院は全て倒れてしまっています。
人間に歯がある以上、歯科医療は絶対になくなることはないので、そんな状態にでもなれば、借入放棄させても歯科医療の継続を国民、国が望むはずです。
これは極端な例ですが、この安心感をもって医院経営にあたる、冷静な判断ができる環境をつくることが最も大事、と私は考えています。
そしてまず、この状態を得られれば、先にご提案しました策の
✔ 助成金の申請をする
✔ 固定費の見直しを行う
✔ アフターコロナに向けて準備する
にも余裕を持って対応できますし、最終的にスタッフ解雇に踏み切らないと医院が耐えられないデッドラインも冷静に判断できるはずです。
また、何より院長が不安定な状態から解放され、スタッフにも良い影響を与えながら、前進できます。
これから縮小診療をどんどん進めていく場合も、一時的に休診にする場合も、これだけの余裕資金があるからこそ、冷静にできることなのです。
繰り返しますが、正解はありません。
2020年4月17日現在、新型コロナの今後の影響は全く見えていません。
余裕資金を確保しておくことが、不透明な環境を生き抜くため、院長が冷静な意思決定をし続けるには最も大切なことだと考えます。
追伸:
ユメオカでは現在、伏見司がリーダーとなって【新型コロナ対策・無料相談】を実施しています。
そこで院長からよくある相談と回答をまとめたレポートを作成しました。
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