4月16日の緊急事態宣言以降は予約キャンセルが増え、スタッフからも不安の声が多くあがっていますよね。
一方で、診療を望む患者さんもいるため、医院としても「どうしていいか分からない」という状況ではないでしょうか。
そんな院長に脱★孤立を促して不安を少しでも減らせるよう、ユメオカではZOOMセミナーや無料相談を急遽立ち上げ、2020年4月7日から行っています。
参加される院長の傾向は、主に「こんな状況の中で焦ってしまい、やることも頭の中も一杯一杯になっている院長」と、「大変な状況ながらも冷静に着実に前進していく院長」の二つに分かれています。
その大きな要因は、医院の規模でも院長の経営能力でもなく、医院の財務基盤の違いです。
そこで今回は、売上もスタッフ数も開業年数も全く同じ2人の院長を例に、新型コロナウイルスの対応における動きの違いと、そこから得られる歯科医院経営に活かせる教訓を記しました。
Contents
2つの医院における新型コロナウイルスの対応の違い

ユニット6台で、スタッフ数12名のバランス歯科クリニックと売上重視歯科クリニックがあります。
医院の売上は両方とも年間12,000万円で、売上もスタッフ数もユニット数も開業年数も全く同じ医院です。
両方の医院とも、これまで好調に患者数も伸ばし成長してきました。
そんな中、2020年4月に新型コロナウイルスの影響により、全国を対象とした緊急事態宣言が発令されました。
そのため、両医院とも診療を縮小した医院運営を余儀なくされたのですが、2つのクリニックの動き方の実態は全く違っていました。
拡大志向で売上1億円以上の院長の新型コロナウイルス対策です

まずは、売上重視歯科クリニックの事例からです。
しかしスタッフからの不安の声や、定期検診を中心に続々と増えるキャンセルに、診療縮小をせざるを得なくなりました。
縮小することで、真っ先に院長が心配になったのがお金です。
というのも、売上は高い方ですが、毎月の返済をするとお金が貯まっていく様子がなく、これまでギリギリの医院経営をしていたためです。
スタッフの給料を支払った月末の通帳残高はいつも変わらず、お金が増えていく実感がありませんでした。
また設備投資も毎年行っており、スタッフの退職も比較的多いことから、その都度お金も必要になり、これまで追加の借入を繰り返してきました。
そのため、借入額は減るどころか増えていて、現在の借入額は14,000万円程残っています。
そんな時に新型コロナウイルスによる診療縮小となったため、院長はお金の不安が真っ先に頭に浮かびました。
まず院長は、最初に顧問税理士さんに相談し、追加融資を受けることにしました。
そして日本政策金融公庫に問い合わせましたが、融資の申し込みが殺到しており今、申し込んでも融資の実行までに2か月以上かかることを伝えられました。
医院の通帳や現金を確認すると月末時点で合わせて、1,100万円程しか残っていません。
また税理士さんに確認してみると「スタッフの給料やその他諸々の固定費、返済だけでも月間で850万円ほどある」と伝えられました。
このまま診療の縮小が続くと、2~3か月後の支払いが足りなくなる可能性があります。
そこで院長は、また税理士さんに電話で相談したところ「生命保険の契約者貸付枠を利用してみては」と提案され、つなぎ融資として1,500万円程を調達することにしました。
ですが、つなぎ融資として生命保険の契約者貸付枠を利用し、その後に日本政策金融公庫の融資を申し込みしても、どれぐらい借りられるかもさっぱり分かりません。
そのためメインバンクにも連絡して、融資の相談をしましたが、前月の売上は上がっていることもあり今、融資を申し込んでも利息は2.5%程度と通常の融資枠とそう変わらない利息になることを担当者から伝えられました。
しかし、資金不足に陥ることの方が怖いため、融資を申し込むことにしたのです。
というより、融資を選んでいられないというのが本音でした。
また、スタッフの休業に伴い、雇用調整助成金についても申請が必要です。
ですが顧問社労士さんも助成金申請でかなり忙しそうで、「労働局も問い合わせが殺到していて、申請しても実行までに融資以上に時間がかかる」ということだけを伝えられました。
このような状況のため、まずは可能な融資を全て利用し、手元資金を確保するしかなかったのです。
バランス経営で売上1億円以上の院長の新型コロナウイルス対策です

それでは次に、バランス歯科クリニックの動き方の事例です。
これから診療縮小がどれぐらい続くかは不明でしたが、当面は患者数で2~3割減ぐらいの見込みでした。
そのため、院長はまず日本政策金融公庫の融資の申し込みをしました。
ここでも融資実行までに2か月以上かかると言われましたが、2~4か月程度であれば問題ないと考えました。
そして診療縮小計画をつくり、患者さんへの案内、そしてスタッフに対する説明を行う準備をしました。
というのもバランス歯科クリニックでは、毎月のキャッシュフロー(利益+減価償却費)が150万円以上あり、売上が2割減少しても若干赤字になるぐらいでした。
また、月末時の現預金は4,200万円ほどあるため、これから診療縮小が3~5割に進んでいっても、最低でも6カ月は十分に持ちこたえられることを院長は顧問コンサルタントに相談しながら計算し、把握していました。
さらに2~4か月後には融資が実行されることも分かったので、特に慌てることなく、診療縮小に向けた動きができたのです。
また、新型コロナウイルスの影響は長期化しそうなので、融資は2か所に最大の申し込みを行いました。
今ある現預金と追加融資額を合わせると、1年間の固定費以上の現預金以上を確保できることになり、余裕を持てる状態にしています。
そして診療縮小計画がある程度終わったら、今度は固定費の見直しです。
診療も減り時間ができた分、今まで忙しくて手を付けられなかった固定費の見直しに着手しました。
それは「あまり活用していない会費類」「CT、レントゲン、レセコンなど設備のリース切れの時期の確認とその後の入れ替え」「開業以来なんとなく行ってきた駅や道の看板、見直しすることなく業者さんに任せっぱなしだったネット広告費」といったものです。
まず、これらの「契約期間」「毎月のコスト」などの情報を整理してExcel表にし、今後の見直しを図りました。
スタッフに関しても休業するスタッフとそうでないスタッフを分けて、出勤するスタッフで診療業務を行わないスタッフには、今後の生産性アップの課題を与え、その対策の準備に着手しました。
もちろん、その間に雇用調整助成金についての申請依頼を社労士さんに依頼しています。
「助成金の入金に関してはかなり先になる見込み」と言われましたが、追加融資で余裕ある状態をつくっていたので、特に慌てることなく粛々と対応しました。
(※)税理士さんは税の専門家であって、融資の専門家ではないので(もちろん一部、融資に強い税理士もいます)、融資に関して相談先によっては全く違った答えが返ってくることはよくあります。
有事の時には、歯科医院の5つの対策手順があります

このように新型コロナウイルスの影響による対策の動き方は、2つの医院で全く違いました。
この2つの医院は同じ売上、ユニット数、スタッフ数、開業年数なのに。
それはどうしてなのか?
一言で言えば、「バランス経営」か「売上(規模)拡大経営」のどちらを重視して、これまでの平時に医院運営してきたかの違いです。
事例の後者のバランス歯科クリニックは「バランス経営」で、前者の売上重視歯科クリニックは「売上(規模)拡大経営」といえます。
そして、ユメオカでは新型コロナウイルスのような有事の歯科医院にける経営戦略(対策の順番)を次のように提案しています。
Ⅰ. 余裕ある現預金の確保
Ⅱ. 縮小診療か休診
Ⅲ. 助成金の申請
Ⅳ. 固定費の見直し
Ⅴ. Withコロナ時代に向けて
しかし、これらを冷静な判断で一歩一歩前進できるか否かは、院長の能力や経営者としての経験年数ではありません。
平時の積み重ねです。
「バランス経営」をしてきた医院は、冷静に前進しやすいですが、「売上(規模)拡大経営」をしてきた院長は焦りが生じ、混乱がさらなる混乱を招いてしまいます。
なぜ焦りが生じるかといえば、平時には想定できなかった売上減になると、早急な現預金の確保が急に必要になってしまうためです。
しかも売上規模が大きいと固定費も大きくなり、複数の金融機関に早急な借入が必要になってしまいます。
こういう時に、平時の積み重ねの差が出るのです。
冒頭の動き方のストーリーのように売上重視歯科クリニックでは、現預金確保のため、つなぎ融資をしたり、あらゆる金融機関に融資の申請をしたりと、追加融資のための活動が増えてしまいます。
さらに、焦りながら行動しているため冷静な判断ができず、後で取り返しのできない判断(融資希望額を間違える、利息の高い融資の申し込み、順番を間違えるなど)につながってしまうこともあります。
財務基盤からわかる2つの医院の大きな違い
それでは「バランス経営」と「売上(規模)拡大経営」で、医院の財務基盤がどう違っているかのポイントを以下にお伝えしていきます。
繰り返しますが、2つとも年間売上は共に12,000万円で同じです。
「バランス経営」の年間収支

・粗利率84%と高く、利益も1480万円あり売上の10%以上を確保
・借入金は年間粗利額より少なく、利息負担も少ない
・現預金が4200万円あり、年間固定費の49%(4200 ÷ 8600)にあたり、6か月分の固定費の現預金を保有
・お金が残りやすい財務体質で、有事の時も6か月分の追加融資のみで1年間売上がなくても耐えられる
「売上(規模)拡大経営」の年間収支

・粗利率78%と予防型歯科医院では低い方で、利益も60万円とほぼ収支トントン状況
・固定費も「バランス型」に比べると700万円くらい高く、特に「その他の固定費」が500万円と高いので、広告費や設備、交際費が過剰気味と推測できる
・借入金は14,000万円残っており、年間粗利額の150%もあり利息負担も大きい
・現預金は1100万円で年間固定費の12%(1100 ÷ 9300)にあたり、1.5か月分程度の固定費の現預金しかない
・有事によって売上が1割減るだけでも赤字、キャッシュフローもマイナスになる見込みで、現預金も少なく追加融資が遅いと致命的に
このように表向き(患者数、ユニット数、スタッフ数)はほとんど同じように見える2つの医院でも、財務基盤が全く違うことはよくあります。
同業者との比較を動機にして、単に売上・規模拡大に走る院長は、このような有事の時に非常に苦しくなります。
一方で、「バランス経営」をしてきた院長は、有事の時でも冷静な判断で、余計な動きをすることなく、着実に実行していけます。
これは平時の積み重ねによって、できることなのです。
そのため、今後もコロナウイルスや災害のような有事が起きることを想定した経営をするためにも「バランス経営」をしていくことが極めて重要になります。
単に規模拡大や売上重視の経営では、有事を乗り越える経営体力がどんどんなくなり、今後ますます厳しくなります。
「バランス経営」をしていくために必要なのは、
✔ ビジョンを描く
✔ ビジョンに向かい、有事でも焦らずに済む収支バランスを把握する
✔ ビジョンを共通言語にスタッフとコミュニケーションできる環境をつくる
✔ ビジョンを実現するアクションプランを作成し、着実にPDS(計画ー実行ー見直し)を回す
です。
そして「バランス経営」を行っていくには医療と経営を分離し、外部の経営パートナーを活用すした方がうまくいくケースが多いです。
しかしその外部パートナーは「攻めが中心」のコンサルタントではなく、「守りと攻め(※)をバランスよくできる」パートナーを選ばないと上手く進まないでしょう。
(※)
攻め:カウンセリング、WEBや動画、採用、オンライン活用など生産性向上や出口戦略
守り:キャッシュフロー経営、数値管理、定期面談管理、昇給・賞与など
経営パートナーとは、売上拡大などの攻めだけでなく、攻めと守りの両方が分かる人材こそが有事の時に本当に力になってくれて、平時のときにもビジョンを共有して共に走れる存在であると私は考えています。
関連教材
『予防型にシフトしていきたい』と思いながら、
- どのようにスタッフに浸透させたらよいか?
- 患者さん教育の在り方はどう考えればよいのか
といった方向性の課題から、
- スタッフ中心医院での昇給制度
- キャンセル空き時間の活用
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といった現場レベルの課題まで色々と院長には考えることがあり1人で考えていると全然進まない、という方も多いでしょう。
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