しかし、どのような観点で利益向上を行えばよいか? 中々、答えがでない院長も多いかもしれません。
その1つの解決策は『粗利率』です。
そこでこの記事では、粗利率アップにつながるアクションをスタッフが自主的に行うための手順について記します。
Contents
粗利率が下がっていると顧問税理士に言いわれた院長の話です
兵庫県で開業する町田先生(仮名)は、顧問税理士さんから
「先生、ここ3カ月ぐらい、粗利率が下がっていますね」
と言われました。そしてこの後、次のような会話が続きました。
税理士:粗利率が下がっているのは、逆に言えば変動費が上がっているといえます。それは例えば技工代とか材料費ですね。
院長:技工代? 材料費? 特にこの3か月で特別なことをした覚えはないですけどね
税理士:そうですか。そうであれば、少し様子見ですかね。
院長:そうですね。ただ原因が分からないのは、少し気持ち悪い感じがしますね。
こんな会話が繰り広げられ、院長は原因が分からずじまいでした。
このように税理士さんに、粗利率が下がっているといわれても、院長には原因が特に思いつきませんし、何をすればいいのか? わかりません。
・そもそも粗利率とは何か?
・どういうことが影響して上がったり下がったりするのか?
を理解せずに「粗利率が下がった」と突然、言われてもピンとこないものです。
歯科医院の粗利率とその平均値についてです
それでは、粗利率とは何か?
それの計算式は「粗利益 ÷ 売上」です。粗利は会計用語で限界利益、売上総利益とも言われ、決算書や月々の試算表では、そのように表記されていることが多いです。

そして、この図(以下、お金のブロックパズル(和仁達也))のように、粗利は売上から変動費を引いた額です。
歯科医院の売上は「保険診療・自費診療・物販」の3つが主で普通、前者2つがほとんどを占めます。また変動費は、技工費や材料費です。
そして歯科医院の粗利率平均は75~80%程度です。
つまり、診療報酬に対して20~25%は、技工費や医薬材料費がかかるといえます。
そして、一般にお金のブロックパズルが示すように粗利率が高いと利益が残りやすくなります。
そのため、粗利率は歯科医院にとっても大事な指標というわけです。
歯科医院の「粗利率が下がる」要因はあります
このように患者さんが増えれば(売上が増えれば)、比例して技工費や医薬材料費は増えます。
そのため、町田先生のように税理士さんから「粗利率が下がっている」と突然言われても、何が原因か分かりにくいのです。
例えば、人件費率が上がっていると言われれば、単純に人が増えたか売上が下がったかで、分かりやすいです。一方で粗利率は人件費率と違って、原因がイメージしにくいものです。
それでは歯科医院で粗利率が下がる要因は何でしょうか?
主に次の3つがあります。
材料費のキャンペーンが終わったり、まとめ買いで安く購入していて、定価に戻ると影響します。また、印象の作り直しが多いと、材料費率は上がってきます。
2)技工費
例えば、技工の再製が増えれば、技工費の割合は増えます。
3)リコール数
リコール(メインテナンス)は治療と違って、技工代が必要ありません。また、医薬材料費の割合も治療に比べて少なくなります。
そのため、例えば同じ売上の2つの医院があっても、リコール数が2倍も違えば、粗利率は異なってきます。
ここから『材料の仕入れはまとめ購入が多く、技工の再製や印象の作り直しが少なく、全患者数におけるリコール数が多い医院』は自然と粗利率が上がる歯科医院と言えます。
そして、その逆もしかりです。
また、歯科医院の中には粗利率が90%以上の医院もあります。その多くは予防型歯科医院で、全患者さんの中でリコール数の割合が極めて高い、もしくは小児患者さんが多い医院さんです。

粗利率が10%あがると利益は何%上がるのか?
そして次に粗利率が利益に与える影響についてお話しします。
例えば、粗利率が80%の一般的な歯科医院と90%の歯科医院の2医院があります。
この2つの医院の売上(医業収入)は同じだとすると、利益はどれぐらい変わるでしょうか。
結論から言えば<font size=”5″>200%</font>です、つまり2倍です。
その理由を端的にお伝えするため、次の歯科医院の一般的な収支モデルを使います。

これは売上を100とした場合、利益が10になっています。
つまり、売上の10%が利益です。
この歯科医院の粗利率が10%上がり、90%になると粗利は90です。
固定費は変わりませんから、残りの利益は20となります。
これが200%になるカラクリです。
そして、利益が2倍になるということは何を意味するか?
それは通常2か月かかって貯まるお金が、半分の1か月で貯まってしまうことを意味します。
2年かかるところが1年ですむ、つまりビジョンの実現が加速します。
なぜなら、お金の貯まり方が早くなれば、先行投資するタイミングも前倒しにできるためです。
それらは例えば、
・光学印象
・高額な年間学術コース
・間接スタッフの採用
・デジタル化の推進
などです。このように医院ビジョンを実現していくため必要になる投資を前倒ししていくことができます。
このように粗利率10%アップは、医院ビジョンの加速化に影響するのです。

粗利率をどのように上げていったらよいのか?
「粗利率の影響はよく分かった、しかしどのように粗利率を上げていけばよいのか」
仮にスタッフに対して、
・リコール数向上
・材料の無駄遣い削減
とスローガンを出してみたところで、ほとんど効果はないでしょう。
このように一方的に取り組むテーマをスローガンのように院長が吠えてみても何も変わりません。
それでは、ユメオカではどうやっているのか? その手順をご紹介します。
2)医院ビジョンと必要な投資の内容
3)医院収支の勉強会

1)医院利益がなぜ必要か?
医院利益が必要な理由を理解してもらいます。
スタッフの中には医院利益は院長に全て渡ると、勘違いしている人も多いからです。
利益があることによって医院、スタッフのメリットは何か? を分かりやすくお伝えします。
2)医院ビジョンと必要な投資の内容
ビジョンに共感があれば、そこに必要な投資も自然とスタッフは理解してくれます。
逆にビジョンがスタッフに伝わってなければ、投資内容も自分達(スタッフ)には関係ないと思われてしまいます。伝わっていれば、スタッフも自分事としてとらえられます。
3)医院の収支概要勉強会
ここでは利益が出る仕組みについて学ぶです。
貴院の収支をもとにお金のブロックパズルに当てはめると一番良いのですが、いきなり、それを共有すると誤解も生まれてしまうこともあります。
そこで、売上を100とした歯科医院収支や一般的な歯科医院の収支の数字を使って、理解を深めても大丈夫です。
ここまで分かるとようやく
『利益を確保するには粗利率アップが効果的、そして利益は医院ビジョンを実現するために絶対必要なもの』
とスタッフが自分の言葉で話せるようになります。
この後、粗利率アップの策について、グループで話し合い、アイディアをだしあって、最後にみんなで共有します。

そして、出たアイディアをホワイトボードに一覧にすると、とても面白い案が出たりします。
それは、ここにたどり着く前に「利益が必要な理由から医院収支まで」をスタッフが理解しているからです。そのため、上記の手順が極めて重要になります。
そして、それらを基にアクションプランをつくって、順番を付け「PLAN – DO – SEE」のサイクルにのせて運営していきます。
また、院内でこのような手順で行うのが難しい場合は、コンサルタントなどのプロに頼む方法もあります。
そうすると、スタッフも客観的に聞け、粗利率アップのアクションまでスムーズに進みやすくなる医院もあります。
関連記事
歯科医院の院長が抱える「お金の不安」と「スタッフ問題」を解決することが医療と経営を軌道に乗せる鍵!
予防管理型医院が治療型医院と異なり 利益が残りやすい理由があります
▶「採用・自立スタッフ育成・動画・数値管理」で予防型歯科医院をアップデートする!

▶「4バランス・医院収支・脱院長依存」など経営教材
