メインテナンスの自費化を伝える 第一歩は保険制度を学ぶこと 対談【前編】:北原文子様

「メインテナンスの自費化」というテーマで現在、フリーの歯科衛生士で永く接遇やコミュニケーション研修を行ってきた北原文子さんとの対談から抜粋した内容の【前編】です。

メインテナンスを自費に移行する際に最も大きな壁になるのが「患者さんがそれを受け入れられるかどうか、価値を感じて納得して頂けるかどうか」です。

同時に「保険制度でできること、できないこと、その限界」を一から学び直すことで自費のメインテナンスの可能性が見えてきます。

これから「メインテナンスの自費化をどう患者さんに伝えようか」悩んでいる医院さんは、内容や価格、ツールなどを考える前にまず、保険制度を学び直すことが有効です。

その点についても北原さんにお話を伺っています。

北原文子さん

【プロフィール】

日本大学歯学部附属歯科衛生専門学校卒業後、都内の自費専門の歯科医院に勤務。

1996年、有限会社エイチ・エムズコレクションに所属。

1年間で1万人以上の患者さんに対して啓発活動を行い、リコール率90%以上の実績を評価され、1997年に専務取締役に就任。

患者満足度の高い医療スタッフの育成は、歯科医院のリコール率にも商品の販売率にも反映する、ということを数字で確認することで、精力的に歯科衛生士教育に携わる。

2004年、副社長に就任。

2018年フリーランスの歯科衛生士として独立。

【教育への想い】
エイチ・エムズコレクションの副社長として永くスタッフ育成に携わり、海外の予防歯科、歯科衛生士の働き方にも精通している。

日本の歯科衛生士の地位向上に貢献すべく、研修や企業とのコラボレーションなどを行ってきている。

丹羽:「『メインテナンスの自費化』というテーマになるのですが、まず北原さんご自身、この『メインテナンスの自費化』、今後の流れも含めて、どのようにお考えなのかというのをお聞かせいただけますか?」

北原:「わかりました。本当にここ数年で自費のクリーニングだったりとか衛生士業務の自費化にしたいというお話とか相談は本当に増えています。

実際、導入している医院さんも増えてきているのですが、私達が考える自費と保険はカテゴリを分けていること自体、なかなか明確に説明しづらいです。

しかも患者さんが何故『自費のメインテナンス』を受診するのか、どういうメリットや付加価値があるのかをご理解いただいているかがスタートラインを切れているか否かになると思います。

そこで技術のクオリティが高いのは必須条件ですが、それ以外に自費を伝えていくスキルの向上ですね。

例えば、私が担当している接遇であったり、コミュニケーションというのはかなり必須になってきます。

やはりクオリティーが高いものを提供するのであれば、それが必要になってくると思いますね。

伝え方だったり、人の話を聞くことであったり、あとその人(歯科衛生士)にやってもらいたいかが大切です。」

丹羽:「そうすると保険ではそれなりにリコール・メインテナンスができてきていても、自費化という事を考えていくと、なかなかうまくいかないのでしょうか?」

北原:「そうですね。実際、保険でメインテナンスをしているクリニックさんがほとんどだと思います。

その医院さんに伺わせていただいた時に、ユニット数、衛生士さんの数、営業時間を加味して今、診ている患者さんの数と点数を計算し、そこから本当にこれがMAX、自分達の能力の中で成果が出し切れているのかというのを衛生士さん自身にも考えて頂きます。

そこが目標設定、達成数としてクリアできていないと、その先の自費に行くステップとしては準備不足となります。

技術面もそうですし、自分の働き方といったマインド的な部分ですね。」

丹羽:「なるほど。保険ではそれなりにメインテナンスで来てくれた医院さんが自費化移行となった時に一番大きな壁になるのは何なのですか?」

北原:「やっぱり患者さんがそれを受診したいと思ってもらえるような伝え方ですよね。

メニューにしてもクリーニングの内容にしてもそうなのですけれども、『本当にその人がそれを受けたいか』『受ける必要性があるか』が患者さんに伝わるかです。」

丹羽:「何が一番伝わらない要素というか、逆にどういう事が伝えるためには必要なのですか?」

北原:「ある企業さんの調査で『定期健診に歯科は行った方が良いですか?』というアンケートの中で、だいたい本当に8割近い人が『行った方が良い』と答えているのです。

だから国民の8割はそういうふうにザックリと考えていらっしゃいます。

しかし、現状来ているのはその半分ぐらいしか来ていないと考えると、まだまだ実は伸びしろがたくさんあります。

定期健診自体は分かっているのだけれどそれを『受診しなければいけない』『したいな』と思う気持ちになれていない。

まだ歯科の医療現場では伝えきれていないものがたくさんあるのかなと思っています。

その中でも自費でメインテナンスしてもらえる良さということを考えていくと、2割ぐらいの人に需要があると考えています。

歯科医院さんの中でもメニューを作ってやって頂くステップというのは大事になってくると思うのですよね。

やはり時間とか期間だったりがあるのですが、保険というのは結局、国で指定された順番通りにメイテナンスをしていくのですが、取り切れていないところがでてきます

例えば、オペで言うとそれを取らずに『じゃあ次回半分オペしますね』という事は有り得ないわけです。

病気を理解していれば、いっぺんにそれをクリーニングする必要性を理解いただけますが、やはり歯科では急に悪化してしまう事が無いケースの場合、保険で受診される方のほうが多いと思います。

そういう意味でも『保険制度でできること、できないこと』を一から学び直し、その輪郭が見えてくると自費の可能性もどんどんはっきりすると思います。

その上で患者さんに説明する方が納得感も得やすいですね。

例えば『保険制度だと1回の施術でできる範囲という制約があるため、一度に全部しっかりと取りきって欲しいという方は時間を長くして自費で行うこともできます』というようにです。

また、本来であれば『歯周病』という明らかに病気になっている方が、健康になるために時間を割いてその治療を受けていただくってことの意味を患者さんに伝えていかなければいけないのかなと強く感じています。

1アクション
保険制度の中でメインテナンスでできないことを列挙してみる

 

 


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ABOUTこの記事をかいた人

丹羽 浩之

株式会社ユメオカ代表 丹羽浩之。 ユメオカとは「夢とお金の作戦会議」の略。 2004年に独立後、現在までに教材は30種類以上を開発し、全国3,000医院以上がユメオカ・ノウハウを活用し予防型経営に取り組んでいる。 そして全国8名の提携コンサルタントによるコンサルティング、【会員制】予防型経営★実践アカデミー、【会員制】歯科『採用★定着』実践ラボを主催している。 また予防歯科、予防医療の普及に最も精力を注いでいる。 座右の銘は「得意淡然、失意泰然」。