歯科勤務医が給料分働かない 勤務医との向き合い方に悩んでいます

岐阜県にある山梨歯科医院、山梨院長(仮)のお話です。

院長は近年、勤務医が入っては2年ほどで辞めてしまうサイクルが続いていて頭を抱えています。

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勤務医が給料に見合った働きができていないと感じてしまう

山梨院長のもとで働く勤務医は、学校を卒業して2年ほどしか経っていません。

卒後2年の歯科医師というのは出来ることが少ないものですが、院長はこの何もできない勤務医に対して給料を50万円支払っています。

「給料分は早めに回収できるようになってほしい」と入所当初は期待を込めていましたが、2年経過した今でも回収できていません。

具体的に言えば、月給50万円を支払っているのに、売上として20%(つまり250万円、保険点数で25万点)を回収できていない状態が続いています。

実際には15万点程度でとどまっているため、給料に見合った働きができていないと感じています。

さらに、技術面などで上手くいっていない部分を指摘すると、その勤務医は「上手くできないのは自分の責任ではなく、院長や医院の責任です」と答えます。

山梨院長は「できないなら練習すべきではないか」と考えますが、勤務医は一向に練習しません。

こういった考え方では勤務医が成長するはずもなく、この先、点数が上がる見込みもありません

これまでも似たようなことがありましたが、何度か指導すると、最終的には勤務医が辞めてしまいました

この繰り返しで、山梨院長は辟易してしまっています。

勤務医には期待しすぎないことも大切です

私の考えでは、解決のポイントは期待しすぎないことです。

近年は歯科医師の開業志向が減少しており、ワークライフバランスを重視する勤務医が増えています。

「生涯、勤務医でいい」と思っている人の割合がどんどん増えているということです。

また、歯科医師の初任給も10年前と比べて大幅に上昇しています。

「これだけ支払っているのだから…」と過剰に期待しないことも重要です。

しかし、院長としては納得しきれない部分も沢山あることと思います。

そんな時は、以下の3つの視点から考えてみましょう。

  • 給料の捉え方
  • スキルアップの方向性
  • 責任の明確化

1. 給料の捉え方

10年以上前と比べて、給料の水準は大きく変化しました。

10年以上前、卒業後2年程度で治療ができない勤務医の月給は30万円ほどでした。

考え方としては「現在は修行中の段階なので給料はこのくらい。売上の20%ほどを達成できるようになれば、給料も増額する」というのが一般的でしたよね。

しかし、現在では初任給が50万円からというのが一般的です。

院長としてはこのような時代の変化を考慮し、給料に対する期待を見直す必要があります。

さらに、給料だけでなく、歯科医師の役割も変化しています。

歯科は治療から予防の時代へと移行し、歯科医師は患者さんの治療に加えて、口腔内のチェックも当然行っています。

さらに、予防患者の管理や歯科衛生士の指導も歯科医師の重要な役割となっています。

今は特に、口腔内のチェックが増加している状況です。

一人の歯科医師が治療によって稼ぐ」という考え方から、「医院全体で予防中心によって稼ぐという形に変化しています。

そのため、「その先生がどれだけ治療を行ったかに応じて、売上の20%が給料になる」という考え方自体が、今の時代には合っていないと感じます。

2. スキルアップの方向性

勤務医が将来どのようなキャリアを目指しているかによって、求められるスキルも異なります

10~20年ほど前は開業医を志願される先生が約90%でしたが、今は開業志望の方は約60%、生涯勤務医志望の方が約40%と時代に合わせて変化しています。

開業を目指す先生は、積極的に治療を学び、点数も上げていきたいと考える一方で、生涯勤務医を目指す方は必ずしもそうではありません。

必要なスキルが異なるのです。

この違いを理解し、それぞれに合った指導や期待を持つことが重要です。

3. 責任の明確化

勤務医が目指すキャリアイメージや必要なスキルに応じて、院内での役割や責任範囲を明確にします

生涯勤務医を希望する人には、例えばメンテナンスや患者管理をメインに担当してもらうことで、医院全体の売上に貢献してもらうという考え方が有効です。

また、給料50万円は総合的にペイできればよいという視点が大事だと考えます。

時代の変化を踏まえ、給料やスキルアップ、責任についての考え方を今一度整理してみてはいかがでしょうか。

まとめ

歯科医師の役割は時代とともに変化しています。

予防中心の現在においては、勤務医がいるだけでも医院にとって大きなメリットがあるという捉え方や考え方も必要です。

従来のように「売上の20%を回収する」という考え方に捉われているのでは、勤務医も院長自身も苦しくなります。

「今、医院にいてくれるだけで十分」という心持ちで臨むことが、院長自身の負担を軽減し、診療に集中するための鍵となるでしょう。

診療に集中できる環境が整えば、医院全体の収益も向上します。

私自身、そういった医院をたくさん見てきました。

実費売上がこれまで月200万円ほどだった医院が、院長の集中度が増すことで300~400万円へと飛躍的に伸びた事例もあります。

勤務医への50万円という給料は、院長が診療に集中するために、医院全体の予防と実費でその分を補うという考えです。

勤務医に対する期待を適切に調整し、感謝の気持ちで接することで、より良い医院経営が実現できるのではないでしょうか。

1アクション
勤務医の見据えるキャリアに合わせた期待を持つ

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ABOUTこの記事をかいた人

丹羽 浩之

株式会社ユメオカ代表 丹羽浩之。 ユメオカとは「夢とお金の作戦会議」の略。 2004年に独立後、現在までに教材は30種類以上を開発し、全国3,000医院以上がユメオカ・ノウハウを活用し予防型経営に取り組んでいる。 そして全国8名の提携コンサルタントによるコンサルティング、【会員制】予防型経営★実践アカデミー、【会員制】歯科『採用★定着』実践ラボを主催している。 また予防歯科、予防医療の普及に最も精力を注いでいる。 座右の銘は「得意淡然、失意泰然」。