こちらの記事では、予防管理型歯科医院経営の一環として、2024年の保険改定に伴う歯科訪問診療について説明します。

日本では2024年の保険制度の改定において、居宅での歯科訪問診療が大幅に増加しました。
1人あたりの訪問診療が1,100点となり、逆に、2人以上では20分以上で410点、10人~19人の施設なら160点と、複数人への点数が大幅に減少して設定されています。
国の方針として、居宅への訪問診療に力を入れるというのが読み取れます。
点数にこれほどの差が出るとなると、すでに施設の訪問診療を積極的にされていた医院さんも、今後は患者さんのご自宅への訪問診療に力を入れる必要があると考えられます。
これから訪問診療をはじめようと考えている医院であれば、必須の設備(ポータブルユニット、ポータブルレントゲン、訪問用の車など)を揃えるのに初期コストがかかるため、訪問診療の患者さんが増える見込みがないと厳しいところかと思います。
Contents
居宅での訪問診療を増やすための具体的な方法を、3つの視点から考えていきます

今回挙げている3つの方法は、どれか1つではなく、組み合わせて行うことをおすすめします。
訪問診療はこちらからアプローチして「今すぐお願いしたい」と依頼されることは少なく、患者さんが必要と感じたタイミングで問い合わせが来るためです。
そのため見込み患者を増やすというイメージで考えるのがよいかと思われます。
1. 外来患者さんと、その家族へのアプローチ

外来されている患者さんを訪問診療に誘導する方法です。
外来で診療を受けている患者さんやその家族が、身体的な理由や事情により通院できなくなった際に、訪問診療を案内します。
院内には訪問診療を始めたことを告知するために待合室などに張り紙を掲示し、来院が難しい方はご自宅へ伺って診療を受けられることを知らせます。
すぐに手を挙げられる方は多くありませんが、周知することで「自分や家族が来院することが難しくなっても、この医院で訪問診療を受けられる」と認識していただけます。
2. 居宅介護支援事業所との連携

次に、居宅介護支援事業所(施設には入っておらず居宅に住んでいる要介護者に対してケアプランを作成し、サービスの調整を行う事業所)へのアプローチです。
厚生労働省が提供している介護事業所・生活関連情報検索「介護サービス情報公表システム」 (mhlw.go.jp)を活用し、地域の居宅介護支援事業所を検索します。
例えばキーワード検索で「兵庫県 居宅介護支援事業所」と入力すると、検索結果に対象の事業所が出てきます。
詳細を見ると、事業所の連絡先が記されているので連絡し、貴院の訪問診療のサービスを紹介して「一度ご挨拶に伺いたい」とアポイントを取ります。
なお、ケアマネージャーさんの中には歯科の訪問診療について詳しく知らない方もいらっしゃいます。
「すでに介護の点数がいっぱいなので、歯科の方にまでは回せない」とおっしゃる方もいるため、「歯科の訪問診療は介護点数が別枠なため、問題ない」とお伝えしておきましょう。
3. 地域包括支援センターへの提案

最後に、地域包括支援センター(地域に住む高齢者の方の生活をサポートする窓口で、健康教室などのイベントも開催している機関)へのアプローチです。2.と同じく、介護サービス情報公表システムを使います。
健康教室の内容は地域包括支援センターの方が考えられることが多いようですが、定期的に行っているとネタ切れなどで困ることもあるそうです。
そこで、歯科医院として口腔ケアや、お口の健康体操の講座開催を提案します。
地域の参加者にアプローチできますし、メーカーさんとタッグを組んでお土産にデンタルケアグッズを提供すれば非常に喜ばれます。
こちらも、電話でご提案とアポイントを取ります。
まとめ

居宅の診療訪問を増やす大きな3つの視点は、
- 外来患者さんとその家族
- 居宅の介護支援事業所
- 地域の包括支援センター
からのアプローチです。
ただ、これらはすぐに効果が出るものではなく、地道な活動が実を結びます。
忘れたころに問い合わせがくるものですので、外来患者さんへのアプローチを中心に行いつつ、定期的にアポイントを取って提案することで訪問診療患者さんを確実に増やします。
訪問診療で受け持った患者さんは基本的に定期診療することになりますので、少しずつでも徐々に、問い合わせを増やしていくやり方が近道になることでしょう。
補足ですが、介護施設へのアプローチもやはり有効です。
多くの施設が開設時に協力医療機関として歯科医院を登録しているために、アプローチを諦める方もいらっしゃいますが、提案を続けることで2番手、3番手の歯科医院として登録してもらえる可能性があります。
また、施設が主契約先の歯科医院とトラブルになるケースもあり、その際には連絡を受けることが少なくありません。
診療点数は下がったものの施設は件数が多いため、効率よく患者さんを診ることができますから、タイミングを逃さないよう定期的にアプローチを続けることが重要です。
さらに、病院との連携も重要です。
特に手術前の口腔ケアが術後の予後に良い影響を与えることが医科では知られており、病院での需要が高まっています。
看護師の方の中には「口の中は専門の方にお任せしたい」とおっしゃる方も結構な割合でいらっしゃいます。
けれど病院にアプローチする歯科医院は多くはないため、意外な穴場となります。
例えば退院後に訪問診療が必要な患者を紹介してもらうことで、居宅や施設での診療につなげることが可能です。施設であれば、その方を起点に広げることもできます。
以上のように、2024年の保険改定を踏まえ、居宅での訪問診療を増やすための具体的なアプローチ方法を説明しました。
今後の診療拡大の参考にしていただければ幸いです。
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