そして、診療時間の短縮を考える上で必ずでてくる不安が「患者さんからのクレーム」です。
つまり、遅い時間帯(18時以降)にしか来院できない患者さんのクレームです。
そして、この問題の対策には、患者さんへのできるだけ早い告知が必要なのは当然でしょう。
と同時に伝え方も重要です。そこで「患者心理(背景)をまず理解した上で、どのように伝えたらよいか」について記述しました。
Contents
時短化による患者さんのクレーム対策にはまず、そもそも論が大切です
『求人環境変化への対応、既存スタッフの定着』を第一に考え、診療を18時終了や17時30分終了というように短くする歯科医院が増えました。
「診療時間を短くしたい!患者数が減ることなく時短化できる方法があります」記事にも書きましたように、診療時間の短縮をする際、院長が不安に思うことに「売上減少」と「患者さんからのクレーム」が挙げられます。
そして今回は、「患者さんからのクレーム」を取り上げます。
診療時間短縮を行う上で「患者さんからのクレーム」は必ず問題に上がります。
しかし、それは3~6カ月前に、手順を踏んで患者さんに説明していけばそれほど大きな問題になることもありません。
そして、患者さんからのクレーム対策は、方法論よりも大事なのは、そもそも論です。
そもそも論(患者背景)をしっかり整理せずに、「どうやって患者さんに納得してもらうか」という方法論に走ると、患者さんと医院の間にズレが生じてしまいます。そもそも論とは、
「そもそも、本当に18時以降にしか来院できない患者さんはどれぐらいいるのか? またその数は今後、増えるのか減るのか?」
です。このそもそも論を考える上で
・なぜ歯科医院は19時や19時30分終了が多くなったのか?
・18時以降にしか来院できない患者さんはどういう人達か?
・今後、それらの人達は増えるのか?
という3つのテーマに絞って整理し、考えていきたいと思います。
というのも、これらの考えを整理できると、医院が時短化に踏み切る勇気にもつながるためです。
18時以降も診療している歯科医院が普通だった理由
3年くらい前まで、多くの歯科医院は19時以降の終了は普通でした。
しかし最近は、特に求人環境の変化に対応する理由から、診療時間の短縮を考える歯科医院が増えてきました。
ではなぜ、18時以降も診療している歯科医院が元々、多かったのか?
この【問い】について何人かの院長にお聞きしてみました。すると、
・開業時は多くの借金もあり、それを少しでも早く返済したいため
・18時以降も診療していないと「やる気がない医院」と思われるのではないかという不安。
といった理由が挙げられました。
端的に言えば「できるだけ遅い時間まで診療していることで、患者増につながる」からでしょう。
そして、多くの院長は「患者さん(レセプト)の数や売上に特に影響がなければ18時終了でもいい、というかそっちの方がスタッフにとっても自分(院長)にとってもうれしい」と思われています。

18時以降にしか来院できない人達はどういう患者さんでしょうか
先ほどの院長の話の中にもありました「会社帰りの人は18時以降しか来院できない」という件ですが、このような人達はどういう方でしょうか。
もちろんそれは、会社の定時が17時30分とか18時のため、その後に来院しようとする人達です。
確かに、こういう人達は多いでしょう。というより、正確には「歯科医院は定時後に行く場所」と決めている人達です。
しかし、こういった人達にも9~18時に来院できる時間は実はあるはずです。それは、
・有給休暇を使う
・朝1時間ずらして出勤する
・フレックスタイムを利用する
などです。つまり、こういう人達は「そんなことまでして歯科医院に通いたくない」と思っている人達なのす。勤務時間の問題ではなく「習慣」の問題なのです。
また、月に2~3回ある治療に9~18時の間に通い続けるのは難しくても、3か月に1回の予防なら、9~18時に来院するのが難しい人は、実際にはほとんどいないはずです。
このように18時以降にしか来院できない会社員の人たちも「物理的(会社の規則など)に来院できない」のではなく多くは習慣の問題なのです。
そして、誰でも最初、習慣を変えることに抵抗感を感じるものです。これが一部の患者さんから時短化に対するクレームの正体です。

18時以降にしか来院できない人はこれから増えるのか? 減るのか?
それでは、そもそも論の最後に,18時以降しか来院できない人達はこれから増えるのでしょうか?
結論から言えば、減るでしょう。
それはなぜか?といえば『働き方改革、ライフタイムバランス』はご存じのように歯科医院だけでなく、一般企業も懸命に取り組んでいるためです。それは、
・年間休暇日数の増加
・残業の削減
・コアタイム(10時―15時)以外は自由に勤務
・いつでもどこでも、場所や時間に縛られない働き方
・副業解禁、推進
といった内容です。「具体的にどのような働き方に変わっているのか」一般企業2社の例を共有します。
まず、一般消費財を扱う株式会社ユニリーバ・ジャパンさんの例です。
この会社では、「いつでもどこでも働ける」制度を設けています。
「いつでも」というのは、5時~22時の間であれば、自由に働く時間を選択して働いてOKです。
「どこでも」というのは、自宅、カフェ、図書館など、オフィスに来なくてもどこで働いてもOKということです。
次にタニタ食堂で有名な株式会社タニタさんです。
この会社では、希望する社員を雇用(社員)ではなく個人事業主とし業務委託するように切り替えています。
それにより、働く側はフレキシブルな働き方ができ、時間も場所も自由に使えます。
これらは一例にすぎませんが、一般企業での働き方改革の一部です。
このような働き方改革を実施している企業で働く患者さんが貴院にも通われているわけで、このような人達にとっては「18時以降の来院」は、習慣の問題以外ないわけです。
以上が、そもそも論です。
このように患者さん側の働き方も変わってきているのです。

そのため「あの患者さんは18時以降しか来院できない」と医院側が決めつけるのではなく、このような患者さんの背景をイメージすると適切な方法論が生まれてくると思います。それはつまり、
歯科医院(当院)の事情をお伝えしたうえで、診療時間の短縮について説明することで、多くの患者さんは
「歯科医院も自分達と同じように働き方改革を進めないと、良い医療サービスを継続することは難しい時代なんだな、それは当然だよね」
というように思ってくれるわけです。そして、患者さんへの伝え方の例は下記です。
歯科医院は一般に女性スタッフが中心で働いており当院も同様で、開業当初に比べ子育て世代のスタッフが増えてきています。
そのため、遅い時間帯の診療に対応できるスタッフが少なくなっています。
そして、この先を考えても、同じ状況が続くと予想されます。そのため長く悩んできましたが、スタッフの長期安定雇用を考えると『診療終了時間を早める』という結論になった次第です。
また、当院では予防中心の医院を目指しており、患者さんとスタッフが長くお付き合いできる医院にすることが、患者さんが安心して通える医院になると考えています。
繰り返しますが、18時以降しか来院できない患者さんの多くは習慣の問題です。
また「習慣は中々変えられない」のは普通のことです。しかし、今回ご紹介しました、そもそも論の前提で、時短化を行う理由を説明することで、多くの患者さんから納得を得られやすくなります。
最後に魅力ある歯科業界をつくっていくために「貴院が患者さんとのギャップを減らし、スムーズに時短化が進むよう」願っています。

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